- ピラティス
2025.11.27
2025.11.24
ピラティスにおいて、呼吸は単なる生命維持活動ではなく、エクササイズの土台そのものです。ピラティスの創始者ジョセフ・ピラティスは「運動の前に呼吸を正しく行う必要がある」と述べ、呼吸を体のコントロールとインナーマッスルの活性化の鍵として位置づけました。
特にピラティスで用いられる胸式呼吸は、姿勢の安定、筋肉の効率的な使用、そして集中力の向上に直結します。呼吸を深く意識することで、あなたのピラティスの質は劇的に変わり、得られる効果も最大化されます。
この記事では、ピラティスの胸式呼吸の正しいやり方、それが体にもたらす影響、そして呼吸を動きに連動させる具体的な方法を、初心者の方にも分かりやすく解説します。
ピラティスでは、全ての動作に先立って呼吸がリードします。この呼吸を意識することで、体幹が内側から整えられ、動きがスムーズになるのです。
▼「まずはピラティスの基本的なやり方を知りたい!」という方はこちらの記事をチェック
ピラティスのやり方を初心者向けに解説|基本姿勢と自宅でできる動作
呼吸法には、主に「胸式呼吸」と「腹式呼吸」がありますが、ピラティスとヨガではそのアプローチが異なります。
| 呼吸法の種類 | 特徴 | 主な効果 |
|---|---|---|
| 胸式呼吸(ピラティス) | 息を吸うときに肋骨を横と後ろに広げ、吐くときにお腹をへこませる。 | 体幹の安定、インナーマッスルの活性化、交感神経を優位にし、活動的な状態を作る。 |
| 腹式呼吸(ヨガなど) | 息を吸うときにお腹を膨らませ、吐くときにお腹をへこませる。 | リラックス効果、副交感神経を優位にし、深いリラックス状態を作る。 |
ピラティスが胸式呼吸を採用する最大の理由は、腹筋を使いながら呼吸を継続できる点にあります。腹筋を緩めずにお腹を引き締めた状態を保ち、肋骨周りの筋肉を使って呼吸することで、エクササイズ中に体幹(コア)を常に安定させることができます。
呼吸は、ただ肺に空気を入れるだけの動作ではありません。呼吸に使われる筋肉(呼吸筋)は、姿勢を支えるインナーマッスルと深く連動しています。
体幹の安定化:深い呼吸を行うことで、背骨の安定に関わる多裂筋(たれつきん)や、腹部をコルセットのように締め付ける腹横筋(ふくおうきん)といったインナーマッスルが活性化されます。
集中力の向上:動きよりも先に呼吸に意識を集中させることで、マインドフルネスの状態になり、無駄な力を抜いて必要な筋肉だけを使うというピラティスの原則を実践しやすくなります。
ピラティスでは、「息を吐くとき」に体幹が最も安定するという考え方があります。
息を吐ききるとき、私たちは自然と腹筋群(特に腹横筋)を強く収縮させます。この「吐く力」を意識的に使うことで、腹部が背骨に向かって引き込まれ、強固なコルセット状態が作られます。この安定した状態で手足を動かすことで、腰に負担をかけることなく、安全かつ効率的にエクササイズを行うことができるのです。
胸式呼吸は、肋骨の動きを最大限に使う呼吸法です。以下の手順で練習することで、インナーマッスルが自然に動き、ピラティスの効果を実感しやすくなります。
鼻から深く吸う:息を吸い始めるときは、お腹はへこませたままキープします。
肋骨を広げる:肺に入った空気が、体の奥から肋骨を横と後ろに押し広げるイメージで吸い込みます。まるで肋骨全体が風船のように膨らむのを感じましょう。このとき、肩がすくみ上がらないように注意します。
意識する筋肉:主に外肋間筋や横隔膜を使い、胸郭(きょうかく:胸部の骨格)を広げます。
口から細く長く吐く:ストローを通して息を吐き出すように、口をすぼめて細く長く息を吐き出します。
お腹を引き締める:吐き出すにしたがって、肋骨が閉じ、お腹が背骨に向かって強く引き込まれるのを感じます。特に、おへその下(丹田)の辺りを最もへこませることを意識しましょう。
意識する筋肉:主に腹筋群(腹横筋など)や内肋間筋を使います。この「お腹を引き締めきった状態」が、次の動きを支える安定したコアの状態です。
胸式呼吸の感覚を掴むために、以下の練習を日常に取り入れてみましょう。
仰向けでの練習(リブ・ケージ・ブリージング)
仰向けになり、両手を肋骨の一番下の部分(あばら骨)に当てます。
息を吸うときに、当てた手が左右に広がり、吐くときに中央に閉じるのを感じながら呼吸を繰り返します。
座位での練習(呼吸と胸郭の動き)
椅子に浅く座り、背筋を伸ばします。
息を吸うときは、背筋を伸ばしたまま胸を開くように意識し、吐くときは、お腹を引き締め、胸郭を静かに閉じるように意識します。
ピラティスのエクササイズでは、「力を入れるとき(動きの負荷がかかる瞬間)に息を吐く」が基本原則です。これにより、体幹を安定させた状態で効率的に筋肉を使うことができます。
ハンドレット(The Hundred)は、ピラティスを代表する腹筋運動です。呼吸法そのものがエクササイズの核となっています。
動作と呼吸:仰向けで体幹を固定し、腕を力強く上下に振る動作に合わせて、「吸って5カウント、吐いて5カウント」を繰り返します。
連動のポイント:吸うときも吐くときも、常に腹筋は引き締めたまま。呼吸を数えることに集中することで、インナーマッスルの持続力と安定性を養います。
背骨の柔軟性と腹筋の強化を促すエクササイズです。
動作と呼吸:仰向けで手を天井に向け、息を吐きながら、背骨を一つずつ床から剥がすように、ゆっくりと上体を起こしていきます。
座った状態で息を吸い、吐きながら、今度は背骨を一つずつ床に押し付けるように、ゆっくりと仰向けに戻ります。
連動のポイント:吐く息で腹筋を深く使うことで、腰に負担をかけず、背骨の動きを細かくコントロールできます。
座位で行う背骨のストレッチです。
動作と呼吸:座った状態で、手を前に伸ばし、息を吸って背筋を伸ばします。
息を吐きながら、おへそを覗き込むように背骨を丸め、お腹を引き締めつつ、背中全体を大きくストレッチします。
連動のポイント:吐く息の力を借りることで、肋骨が閉じ、背骨をより深く、安全に丸めることができます。この動作は、日々の猫背の改善に非常に効果的です。
正しい胸式呼吸が習慣化することで、ピラティスの効果は飛躍的に向上し、体には具体的な変化が現れます。
呼吸と動作が一致すると、エクササイズ中に必要な筋肉だけが的確に働くようになり、本来使うべきではないアウターマッスル(肩や首など)の無駄な緊張が解放されます。これにより、少ない力で最大の効果を得る、「筋肉の効率化」が実現します。
体幹を安定させるためのインナーマッスルが呼吸によって活性化されるため、手足を動かす際にも体の軸がブレなくなります。動きに「キレ」と「コントロール」が生まれ、見た目にも美しく、機能的な動きができるようになります。体のブレが減ることで、腰や関節への負担も大幅に軽減されます。
胸式呼吸で肋骨周りの呼吸筋を大きく使うことは、体内に取り込む酸素量を増やします。
代謝アップ:十分な酸素は細胞の働きを活発にし、代謝の向上に繋がります。
血流促進:深い呼吸による胸郭の動きは、腹部や胸部の内臓を優しくマッサージし、血流を促進します。老廃物の排出がスムーズになるため、疲れを翌日に持ち越さない、疲れにくい体へと体質が変化していきます。
▼呼吸とあわせて知っておきたい、ピラティス全体の効果についてはこちらで詳しく紹介しています
ピラティスの効果とは?体幹強化・姿勢改善・ダイエットまで徹底解説
A. ピラティスは、主に胸式呼吸(肋骨を広げる)で体幹を安定させ、活動的な状態を保ちます。一方、ヨガは主に腹式呼吸(お腹を膨らませる)でリラックス効果を高めることを重視します。ピラティスでは、腹筋を使いながら呼吸を続けることで、動きのコントロールを可能にしている点が最大の違いです。
A. 焦る必要はありません。特に肋骨が硬くなっている方は、すぐに胸式呼吸ができないことがあります。まずは仰向けになり、肋骨に手を当てて、「吸うときに手が左右に広がる」感覚だけに集中して、ゆったりと練習しましょう。インストラクターに肋骨の動きをサポートしてもらいながら練習することも有効です。
A. 日常の隙間時間で以下の練習を取り入れましょう。
車の運転中やデスクワーク中:背筋を伸ばし、お腹は軽く引き締めたまま、口をすぼめて細く長く息を吐ききる練習を繰り返します。
意識の集中:息を吐ききるときに、おへそが背骨にグッと近づく感覚を強く意識することで、腹横筋への刺激が深まります。
ピラティスの呼吸は、単なる技術ではなく、エクササイズの土台であり、体のコントロールシステムです。
「吸う」ことで肋骨を開き、全身に酸素を送る。
「吐く」ことで腹筋を深く使い、体幹を安定させる。
この「意識して吸う・吐く」という習慣は、ピラティスの効果を高めるだけでなく、日常の姿勢やメンタルにも良い影響を与えます。深い呼吸が自然にできるようになることで、無意識のうちに姿勢が整い、心も軽やかになります。
フィットネスクラブエイムでは、マットの上で体幹を中心に体の動きをトレーニングしていくピラティスと、呼吸法と身体の可動域に重点を置きゆっくりとコントロールされた動きで行うレズミルズピラティスのクラスをご準備しています。呼吸の力を最大限に活かし、ピラティスの効果をぜひスタジオで実感してください。
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監修:舛井達郎 エイムのマーケティングに携わり、紙媒体やWeb広告の運用を行っている。動画や広告制作も担当し幅広い業務に従事。フィットネスの普及のため、運動の方法や健康についてインスタグラムでの発信も行っている。