- ピラティス
2026.04.20
2026.05.28
「ピラティスって、モデルやセレブがスタイル維持のために行うハードな運動でしょ?」 そんなイメージを持っている方も多いかもしれません。しかし、実はピラティスの歴史を遡ると、そのルーツは「リハビリテーション」にあります。
過度な負荷をかけて筋肉を大きく育てる筋トレとは異なり、ピラティスは「骨格を正しい位置に整え、体幹を安定させて、体本来の動かし方を取り戻す」ことを目的としています。そのため、現在でもリハビリの現場や、ケガからの復帰を目指すコンディショニングの手段として広く活用されているのです。
今回は、ピラティスとリハビリの深い関係性から、一般的な運動との違い、初心者でも安心して取り入れられる具体的なエクササイズまで詳しく解説します。
ピラティスがリハビリに効果的とされる理由は、その「成り立ち」と「運動の目的」にあります。
ピラティスは1900年代初頭、ドイツ人の看護師ジョセフ・H・ピラティス氏によって考案されました。第一次世界大戦中、彼がイギリスの捕虜収容所で負傷兵たちのリハビリやコンディショニング(体調管理)のためにベッドの廃材などを使ってエクササイズを提供したことが始まりです。
寝たきりの状態でも体に負担をかけずに筋力を維持し、機能を回復できるよう工夫された医療的な背景があるからこそ、現代でもリハビリの現場と非常に親和性が高いのです。
一般的なウエイトトレーニングは、重い負荷をかけて筋肉を大きく肥大させることを目指します。一方でピラティスは、「骨格を本来の正しい位置に整え、最小限の力で効率的に体を動かすこと」を重視します。「使われすぎて疲弊している筋肉」を緩め、「眠っていて使われていない筋肉」を目覚めさせることで、体全体のバランスを最適化していくアプローチを行います。
ピラティスには、運動が苦手な方やケガからの回復期にある方でも安全に取り組める、リハビリ的観点から優れた特徴が3つあります。
ピラティスでは、おなかの深い部分にあるインナーマッスル(腹横筋や骨盤底筋群など)を常に意識し、体の中心軸である「体幹(パワーハウス)」を安定させます。 中心がしっかり固定された状態で手足を動かすため、関節や腰に余計な負担がかからず、安全に動かすことが可能です。
私たちは日常生活のなかで、無意識に「右脚ばかりに体重をかける」「肩が内側に入り込んでいる」といった特有のクセを持っています。 ピラティスは自分の体の内側に意識を集中させて動かすため、「あれ、右のほうが動かしにくいな」「左のほうがバランスがとりやすい」といった、自分自身の左右差や姿勢の崩れにいち早く気づく(=認知する)ことができます。
ピラティスのエクササイズは、反動や勢いを使わず、呼吸に合わせてコントロールしながらゆっくりと行います。 そのため、心臓や血管への急激な負担が少なく、運動中のケガのリスクも極めて低いです。自分の体力や関節の可動域に合わせて、無理のない範囲で強度を細かく調整できるのも大きなメリットです。
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ピラティスは「痛みを治療する医療行為」そのものではありませんが、以下のような状態のコンディショニング(機能改善・予防)において、非常に高い効果を発揮します。
ピラティスは「痛みを治療する医療行為」そのものではありませんが、以下のような状態のコンディショニング(機能改善・予防)において、非常に高い効果を発揮します。
デスクワーク続きで運動不足になると、姿勢を支えるインナーマッスルが弱くなり、おなかがぽっこり出たり、腰痛を引き起こしやすくなったりします。 ピラティスは運動経験に関わらず、寝た姿勢や四つん這いの姿勢から始められるため、低下してしまった体幹の筋力を安全に呼び戻すことができます。
「ケガや病気の治療が終わり、お医者様から運動の許可が出たけれど、いきなり激しいスポーツをするのは怖い」という方のステップアップとして最適です。 低下した筋力や関節の柔軟性を段階的に高め、再びケガをしないための正しい体の使い方のベース(土台)を作ることができます。
安全に体を整えるためのピラティスですが、取り組む際にはいくつか覚えておきたい注意点があります。
体を動かしたときにズキッとした鋭い痛みがある場合や、関節が腫れて熱を持っているようなときは、エクササイズを中止して安静にしてください。 痛みを我慢して動かすと、かえって症状を悪化させる恐れがあります。「痛気持ちいい」を通り越して不快な痛みがあるときは、絶対に無理をしないことが原則です。
ピラティスは、病気や重度なケガを直接治す「医療行為」や「治療」ではありません。 あくまで、医師や理学療法士による適切な治療・リハビリの後に、「体の機能を維持・向上させるため」「再発を予防するため」のコンディショニング、健康増進の手段として位置づけましょう。
ピラティスには、マットで行うシンプルなものから、専用のマシン(リフォーマーなど)を使うものまで数百種類のエクササイズが存在します。 周囲の人と比べて難しいポーズを取ろうとする必要はありません。自分の今の筋力、柔軟性、その日の体調に合わせた最適なレベルで行うことが、結果的に一番の近道となります。
それでは、自宅のマットや床の上で安全にできる、初心者向け・リハビリ的観点を取り入れた代表的な3つの動きをご紹介します。
仰向けになり、骨盤を傾けながらお尻を持ち上げる動きです。背骨を1本ずつ独立して動かす感覚(アーティキュレーション)を養い、腰周りの緊張をほぐします。
1.仰向けに寝て、膝を90度に曲げて立てます。足幅は拳一つ分空けておきます。
2.息を吸って準備し、口から吐きながらおへそを床に沈め、骨盤を自分側に傾けます。
3.そのまま足裏で床を押し、尾骨(お尻の骨)から、背骨を1本ずつ床から剥がしていくように、ゆっくりとお尻を持ち上げます。
4.肩から膝までが一直線になるところまで上げたら息を吸います。
5.息を吐きながら、今度は胸の裏側の背骨から、1本ずつ丁寧に床へ下ろしていき、最後に骨盤を元の位置に戻します(5回〜8回繰り返す)。
おなかを薄く凹ませた状態をキープし、深い呼吸を繰り返すことで、体幹のインナーマッスル(腹横筋)を強力に活性化させます。
1.仰向けに寝て、両膝を胸の上に引き寄せ、すねが床と平行になるように保ちます(テーブルトップ)。
2.息を吐きながら頭と肩を少しだけ床から起こし、目線はおへそに向けます。両腕は体の横に、床と平行にまっすぐ伸ばします。
3.おなかをペタンコに凹ませたまま、腕を上下に小刻みに振ります。
4.「5回吸いながら腕を振る」「5回吐きながら腕を振る」を1サイクルとし、無理のない回数(まずは20〜30回、慣れたら100回を目指す)行います。
※首が辛い場合は、頭を床に下ろしたまま腕を振るだけでも効果があります。
四つん這いの姿勢で背中を丸めたり反らせたりすることで、自律神経の通り道である背骨全体の柔軟性を高め、肩コリや腰痛の予防につなげます。
1.肩の真下に手首、股関節の真下に膝がくるように四つん這いになります。背中はまっすぐに保ちます。
2.息を吸って準備し、口から吐きながら、尾骨を下に向け、おへそを天井に引き上げるように背中を丸めていきます。目線はおへそです。
3.息を吸いながら、今度は骨盤を反対側に傾け、胸を前に見せるようにして、背骨を優しく反らせていきます(目線は斜め前)。
4.呼吸に合わせて、この丸める・反らせる動きをゆっくりと5回ほど繰り返します。
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A. 必ず担当の医師や理学療法士の許可を得てから行ってください。 ケガや手術の直後の場合、動かしてはいけない時期(急性期)があります。医療機関でのリハビリが終了した段階や、「軽い運動をしても良い」と専門医の許可が下りてから、コンディショニングとして取り入れるのが最も安全です。
A. まったく問題ありません。むしろ筋力がない方にこそ適しています。 ピラティスはもともとベッドの上で動けない人のために作られた背景があるため、重いウエイトを持てない方や、シニア世代の方でも安心して始められます。負荷の低い、優しい動きから徐々にステップアップしていきましょう。
A. ストレッチは主に「筋肉を伸ばす」ものですが、ピラティスは「骨格を整えながら、筋肉を正しく働かせる(動く)」ものです。 ストレッチが体の柔軟性を高める「静」のアプローチだとすれば、ピラティスは正しい姿勢を維持するための筋力やコントロール力を養う「動」のアプローチです。ピラティスは、ストレッチの効果と軽い筋トレの効果を同時に得られる運動だと言えます。
ピラティスは、単にハードに体を追い込んで鍛えるだけの運動ではありません。 自分の「姿勢・呼吸・体幹」に意識を向け、崩れてしまった体のバランスを本来の正しい状態へと丁寧に整えていく、安全性の高いエクササイズです。
だからこそ、リハビリの精神を引き継ぐピラティスは、年齢や運動経験を問わず、誰もが一生続けられる「一生モノの健康習慣」になり得ます。
「家で動画を見ながらやってみたけれど、正しいフォームができているか不安…」 「自分の姿勢のクセを見てもらいながら、無理なく運動を始めたい!」
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